手話通訳で食べていくには

手話通訳のみで食べていく、という道はかなり険しいということはこの業界にいる人なら大抵ご存知だと思うのですけれど、実際どれくらいのものなのかちと試算してみようと思います。

 

まずは市町村の通訳でですね。僕は合格していないので(笑)わかりませんが、知り合いに聞いたら時給1000円くらいとのことでした。

ほかには大学の講義通訳。僕の知っているところではひとコマ(90分)で2400円くらいだったかな。つまり時給に換算すれば1600円。

都派協だとかなり良さそうなんですが、残念ながら周りに登録している人がいないのでわかりません。今度聞きに行ってみましょうか。。

ちょっと趣旨からは外れるかもしれませんが、電話リレーサービスなどの電話通訳専門だと時給は1000-1200円で募集している模様です。手話通訳士の資格が必要な場合もありますが。

 

そもそも大きな問題として、そんなに依頼がないんですよね。毎日依頼を受けるなんてほぼありえないので、自治体での通訳はお小遣い程度にしかなりません。それに時給1000円や1600円では仮に1日8時間コンスタントに依頼があったとしても年収では200万から320万です。通訳の場合は時間外に資料を読み込んだりと通訳の準備をする時間もありますから、実質の時給はさらに下がっていきます。

まー、要するに時給制の通訳で食べていくのは無理です。

 

民間の通訳だと報酬はかなり良いと思います。半日20000円〜とか。もちろん言うまでもなく狭き門ですし、そもそも1日20000円の給与と仮定しても年収にしたら480万にしかなりません。いや、まぁ立派な額だとは思いますが、あのプレッシャーを毎日こなしてこの金額かー・・って思いますけどね。昇給ないし。

それに毎日依頼があればいいですけど、そうなると通訳の準備もかなり大変です。

 

こんな現実を見せられたら手話通訳になりたいと思う人が少数派になるのは必定。

現実的には自分の業務の一部に手話通訳がある、というスタイルで仕事をしている人がほとんどでしょう。市区町村の通訳コーディネータをしつつ、たまには自分も通訳に出るとか、障害福祉課の業務をしつつ、ろう者が来庁した時は手話通訳として対応するとか。

一般企業で手話通訳が設置されていればいいのでしょうけど、大手企業でも専任通訳という仕事はほとんどありません。兼任ということならありえますが・・。

現状、一般企業で専任の手話通訳を設置しないのはコストに応じたリターンを回収できないと判断されているから。手話通訳は必要な時にだけ外注すれば良いというスタンスが一般的でしょう。

そういった環境がろう者の勤労意欲や昇進を阻み、そのせいで企業はさらにろう者の存在を軽んじるようになる・・という負のスパイラルが起きていると思われます。差別解消法も努力義務でしかないので、一般企業に設置手話通訳がつくのはもう少し時間がかかるでしょうね。普通の企業はそれ以前の問題ですが。

企業内での手話通訳という業務が一般的になれば、手話で食べていくことももう少しリアリティのあることになるかもしれません。でも、技術が発展して文字通訳にかかるコストが限りなくゼロになればわざわざ手話通訳を雇うことはなくなるかもしれません。

これについてはまた書きます。