ろう通訳とは?
私もよくわかってないんです(完)
オリンピックの閉会式にろう通訳があった、ということで一瞬周りが賑わいましたが、そもそもこの業界にいても「ろう通訳」のことをよく知らない方が多いと思います。私の周囲には高齢ろう者が多いので若い人はそうでもないのかもしれませんが・・
ごくごく普通に考えて、なぜわざわざろう者を挟んで通訳するのか??
理屈だけ考えると、わざわざ通訳の人数を増やすのは無駄でしかありません。つまりろう通訳が必要とされているということは、充分な技術を持つ聴者が不足しているということ。
もちろん常にろう通訳が必要とされているわけではなくて、例えば学術会議や今回の催し物、ほかには国や自治体からのメッセージなど、特に高い技術が求められる通訳現場での話だとは思います。
手話通訳士だけに限っても現時点で人数は全国で3,831名。私の肌感覚(都内)で申し訳ないのですが、上記のような場面で通訳ができる人材は10%程度ではないでしょうか。東京は827人か・・80人もいるかな?
そもそも一度取得すれば更新もない資格なので、827人のうち現役で手話を行っている人がどれくらいいるのかもわかりませんからね。高齢化も激しい。2018年の時点で平均年齢55.2歳だものな。
いくつか資料を漁ってみましたが、根本的にはろう者の行動様式、いわゆるろう文化への理解がないと真にろう者に寄り添った通訳はできない・・ということらしいです。確かに手話とろう文化を聴者に叩き込むよりも初めからろう者に通訳してもらったほうが早いでしょうし、手話ニュースに代表される原稿を読み上げるタイプの通訳であれば初めからろう通訳が良いでしょう。実際手話ニュースはいつの間にかほぼろう者キャスターですものね。
しかしわざわざ聴者とろう者2名体制で通訳しなければならないほどなのか(交代を考えたら4名体制?)。それは手話が身につけるためのハードルが高いからなのか、聴者の手話学習者へのカリキュラムの問題なのかはわかりませんが、いずれにせよ音声言語では一般的ではないように思います。
もちろん他の音声言語と違って常に手話話者は少数者であり、通訳者は常に多数派の人間ですから、バイアスがかかることを考えるとろう者側の通訳がいるのは良いことでしょう。ろう者自身のエンパワメントにつながる部分もあるように思います。
ろう通訳を目指す若いろう者が増える・・そんな未来もあるのか?
聴者の通訳すらほとんどマトモに食えないことを考えると厳しい気がしますが、ASLや国際手話のスキルがセットになれば可能性あるかもしれません。
いずれにせよ通訳の選択肢が広がるのは良いことです。
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