ろう者と障害者年金

始めにいちおー言っておきますが、僕は障害者年金の是非を論じたいわけではありません。
この業界(?)にいる聴者すらも、意外と年金や手当についてきちんと知らない人が多いようです。しかしろう者の生活を語るうえで障害者年金の存在は避けて通れないと思うので、まずは書いておきましょう。

障害者年金、要するに成人して死ぬまで、2ヶ月に一度もらえるお金のことです。
ほとんどのろう者(細かい定義はおいといて、手話を使う人、くらいの認識でいいです)はおおよそ年間97万円を国からもらっている。もちろん非課税。
ちなみに自治体で多少値段は前後するが、障害者福祉手当というものもあり、こちらは年間18万ほど。合わせて115万なので、だいたい月額10万円に相当します。

これって・・相当大きい額ですよね?
ノーリスクで、月額10万円がもらえる。入院中だろうと育休中だろうと入ってくる。所得制限はありますけどかなりハードルが高い。例えば独身なら所得が360.4万円までは全額、そこを超えると半額支給になる。
所得360万がどれくらいの年収に相当するかというと、

例)ろう者で男性、独身、28歳彼女なし

・・だと600-650万くらいかな(年齢は関係ないです)。600万を稼ぐ若いろう者はそれほど多くはないですよね。だって日本全体の平均でも20代後半で600万稼いでいるのは6%くらいです。
というか600万もらってなおかつ115万も入ってくるの? という話ですよ。

そもそも障害者年金という制度が何故必要なのでしょうか。
日本の場合、視覚障害だろうと、聴覚障害だろうと、内部障害だろうと年金の判断基準は障害等級によって決められます。障害者が自立して生きていくにあたり、障害を原因とするコストに金銭で充当する、という考え方なのでしょう。
しかしろう者だから必要な金銭コスト、って何があるのでしょうか。僕の妻はろう者ですが、少なくとも僕の家では思いつかない。他の障害は違うのでしょうか?
ろう者は自治体に手話通訳を頼んでも無料ですし、今はテレビにも字幕がついています。連絡手段も情報収集もほとんどスマートフォン。SiriやGoogleHomeは使えませんけれど。

もちろん見えない部分の金銭コストが発生しているのは理解しています。サラリーマンであれば障害の有無は昇給や出世に大いに関わってくると思います。特にろう者はコミュニケーションの面で聴者社会を生きるには不利でしょう。一般論として。
そうなると年金額は妥当なのかな? しかしこのご時世、聴者社会で出世していきたいと考えるろう者がどれくらいいるのでしょうね。
聴者ですら少数派のような気がするのだけれど・・笑