健聴者と結婚したい?

「私、先輩の奥さんが羨ましいです」

 

後輩の女子社員からこんなセリフを言われたらどう思います?
手話を学んでいる男性(かなり少ない)はどちらかというと地味でおとなしく、奥手な人が多いので、
「あれ、この子僕のことを・・? どうしよう、妻子がいるのに」
などと変な妄想を始めてしまうかもしれません。僕はしました。
かし現実は厳しく、その後に続く言葉は

 

「健聴者と結婚できて」

 

でした。おいおい。
そう、その女子はろう者なのでした。

 

上のセリフはなかなか面白く、かつ示唆にも富んでいると思いませんか?
ろう者のなかで聴者と結婚したいと考えている人はどれくらいいるんでしょう。逆はほぼゼロだと思うんですよ。少なくとも「ろう者だから」結婚したい、という考え方はまずありえない。年金目当てくらい?(笑)

本来であれば「聴者だから」結婚したい、もありえないはずなのですが、残念ながら現時点ではろう者自身が「我々は聴者と対等である」という言説を信じられていないように思います。あくまで僕の周りでは、ということですが。
対等だと思っていたら冒頭のセリフはありえないですよね。

 

健聴者と結婚した人が羨ましいなら、
ろう者と結婚した人は可哀想?

 

ちょっとそれは飛躍しすぎかもしれません。「先輩の奥さんは、イケメンと結婚できて羨ましい」くらいのノリだった可能性もありますね。まぁそのあと「ろう者と付き合いたくない」みたいなこと言ってたけど。あと僕はイケメンではないとも。ほっといてほしい。

その子は素直ないい子で、他意なく思ったことを言っただけだと思います。それだけにこのセリフは考えさせるものがありますね。
ちなみに高齢ろう者に妻がろうであることを言うと、そのリアクションは高確率で

 

【理解】【ある】

 

です。むむ、時代を感じる。
「(障害に)ご理解があるんですね」と訳すのとはややニュアンスが異なるように僕は思いますが、いずれにせよ両者が対等だとは考えていない。

今は恋愛結婚が多数派なので、一般的には結婚までに男女がコミュニケーションを充分にとる必要があります。
ろう者と聴者のカップルの場合、その方法が手話なのか日本語なのかはそれぞれでしょうが、いずれにせよ対等な立場で関係を深めて欲しいものですね。